日刊木材新聞 2015年6月3日(水)付
非住宅木造の普及へ仕組み作り
中大規模木造プレカット技術協会
中大規模木造プレカット技術協会(稲山正弘代表理事=東京大学大学院教授)は、5月29日、東京大学弥生講堂一条ホールで15年度通常総会を開いた。木造校舎のJIS A3301が3月に改正されたことを受け、JISに盛り込まれたトラスや高耐力壁などの仕様を学校以外の木造建築でも広く使えるように、構造計算書や現場施工の品質管理の標準化、プレカットCADや構造計算ソフトへの対応など具体的な作業を進めてきたことを報告した。
木造校舎のJISを活用
同協会は、一般流通材と住宅用の機械プレカットを使った非住宅木造建築物の推進を図るために昨年7月に設立され、今年4月14日には一般社団法人としての登記を行った。木造校舎のJIS改正のなかで重要な役割を担ってきた稲山教授が代表理事を務め、改正されたJISを使い、主にS造で建てられている低層建築の市場約400万平方メートルを木造に置き換えていく目標を示している。中・大規模木造建築物は大断面集成材と製作金物を使うためコスト高のイメージがある。これを住宅向けに一般で流通しているサイズの材とプレカットによる加工でコストを低減し、さらにJISで規定されたトラスや壁倍率15倍相当の高耐力壁、160kNのホールダウン金物などを学校以外の木造建築でも使えるように体制を整備していく。
同協会では10月に大阪、東京、愛知、福岡で日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、JBN、JSCAとの共催で中大規模木造設計セミナーの開催を計画する。さらに、広島県の補助での山形トラスの実大載荷試験、林野庁の補助での平行弦トラスの実験なども10月以降に実施する計画だ。
会員企業の宮川工機は、JIS改正に当たり既存のプレカット加工機で対応できる加工形状にできるように進めてきたことを報告。トーアエンジニアリングは、同社のプレカットCADアルティメットのオプションでトラス対応を行い9月に発売することを、インテグラルも構造計算ソフトの構造EXでJISを基にしたトラスや高耐力壁の仕様を盛り込むことを説明した。
また、中・大規模木造建築物の普及に向けた課題として、木造の構造計算ができる設計者を登録し、問い合わせに対応できるような仕組みづくりも行うことになった。